塩味は部活帰りの青春の思い出
8月の沖縄は、コロナ禍にもかかわらず観光客や修学旅行生の姿が増えています。彼らが訪れる観光土産店に並んだのは人気の沖縄菓子。驚いたのは「塩せんべい」が綺麗に包装されて並んでいたことです。
買い食いの思い出は「塩せんべい」
それは、私が中学時代にとてもお世話になったせんべいなのです。
ソフトテニスの部活帰りにマチヤグヮー(駄菓子屋)に立寄ると、必ずと言っていいほど買っていたお菓子です。私の中で「塩せんべい」は、駄菓子界の王様でした。ガムやチョコレート、クッキーなど小ちゃいお菓子が多い中、丸くてドシッと大きいのです。
お米ではなく小麦粉を使用し、直径約10cmで厚さも約1cmもあり、やや粗めの塩がまぶされています。値段は10円。コスパも良く、私の空いたお腹も心も満たしてくれたのです。それに、試合に勝ったり嬉しい事があった時には、隣に並んだチョコレートクリームのパウチも加えて合計20円。塩せんべいとチョコの甘ジョッパイ味が私のちょっとした贅沢でした。ひと抱えほどの大きな透明容器に、塩せんべいは十数枚入っていました。お店に入るとオレンジの蓋を自分で開けて、手づかみで1枚取り出し、お店の奥にいるおばさんに10円を払うのです。塩のしっかりついたものを選んだのは、数時間太陽の下で部活をした後だったからかもしれません。部活仲間との帰り道の楽しみの一つでした。
昔は子ども向けの甘いせんべいだった!?
有名な「丸吉塩せんべい」のお店にお話しを伺いに行ってみました。メニューに塩せんべいを加えたカフェも併設、あのマチヤグヮーの世界とはガラリと変わっていてとても驚きました。
代表の新田民子さんのお話しによると、砂糖と食紅を使った甘い味のせんべいを子どもたちは好んでいた。ある菓子職人の方が、子どもから大人までが欲しがる味として「塩」を考えたと言う。昭和30年代には大人気となり、子どもの頃に塩せんべいが売り切れの時には、届くのを「まちかんてぃ(まだかまだかと待っていた)」していたと言います。小遣いの1セント(沖縄は米ドル時代でした)では足りない子には、店のおばさんがハサミで半分にして渡してくれたそうです。
作り方にも工夫が。塩が落ちないように、食用油を塗った上に塩をまぶす。形も、四角だと機械で回転する時に角が削られてしまう心配もあって「現在の丸い形がベスト」だと説明してくれました。
煎餅といえば米を使った醤油ベースが全国的に主流ですが、沖縄は小麦粉に塩。「暑い沖縄だから熱中症予防にもいい。沖縄の気候風土にあった商品だったから今でも変わらずロングセラーになっています。」
近くのスーパーには中学時代からの変わらない塩せんべいが6枚組で売られています。パリっとした米の煎餅もいいですが、ドシっとした食べ応えと塩分補給もできるので、夏の小腹満たしにはおすすめです。時には「塩せんべい」も召し上がってみませんか?
この記事を書いた人

中地香苗(なかち・かなえ)
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