家族の健康を支える、「推し野菜」
沖縄ではゴーヤーに負けないくらい夏を代表する野菜のパパイヤ。旬の時期は、7月〜9月と言われているが、10月に入った今でも、庭でたわわに実っている姿をみかける。健康にもよく、個人的にも大好きなこの野菜が、「2022年食のトレンド予測スーパーフードランキング」で一位になったと聞き、「推し」がようやく注目されたようで嬉しくなった。
そこで沖縄ではどうやってパパイヤを食べてきたか、母を含めて70代以上の数人に聞いてみた。オレンジ色になるまで熟した状態の果物としても食されるが、今回は青い野菜として注目してみた。
ど定番は「パパイヤしりしりー」。細い千切り状にすりおろして人参やニラなども加えて、シンプルに塩とダシで味付けしながら炒めたもの。パパイヤイリチー(炒め)ともいう。味にクセのない青パパイヤは、醤油よりは、塩のほうが甘味が引き出されて合うとのこと。ダシをよく吸収して、全体的に薄味でも、組み合わされた素材の風味が生かされており、味わい深い。
続けて「パパイヤのおかず」。余談だが、沖縄の食堂には「おかず」や「みそ汁」で独立したメニューがちゃんと存在し、ご飯もセットになっているのが当たり前。それを知らずに「おかずとみそ汁、ご飯もね」と注文するとテーブルの上は…大変なことになるので気をつけていただきたい。
話を戻して「おかず」は、しりしりーではなく、薄切りにする。その他、人参やニラなどと炒める。豚肉を入れて塩味で整えてもいいが、70代以上の方のお勧めは鯖缶やツナ缶での味付け。どんな具材でも、まとまる。
「パパイヤは肉をやわらかくする」という話とセットで出てくるメニューが「パパイヤのおつゆ」。やぎ肉、馬肉、牛肉、豚のソーキ…味にクセがないパパイヤはどんな肉とも相性がいい。昆布や黄色い島人参を一緒に入れて煮込むのが定番だ。
「母乳の出がよくなる」とはよく知られた話で、パパイヤを食べると産後の肥立ちがよくなると言われている。実際、パパインという脂肪・タンパク質の分解酵素や、カリウムやカロテンを多く含み、消化吸収を助け、疲労を回復する働きがあるとされている。
タイ料理には生のパパイヤを生かしたサラダ「ソムタム」があるが、沖縄では生で食べる方法を聞いたことがなかった。が!灯台下暗し。今回、聞き取った中で、母から出てきたのが「パパイヤのなます」。「しりしりーして生でも食べたよ」とさらりと話す。「おじーが捕ってきた魚を、おばーが焼いて、身をほぐして、味噌と酢を入れて味付けしてたさ。若いやわらかい時だけだよ。しりしりーしたら生でもおいしく食べられたよ」と教えてくれた。
続けて「とにかく、おばーは物知りだったからね、健康にいいから、心臓にいいから、血のめぐりを良くするからとよく言っていたさ」と念を押すように話し、祖母にとってのパパイヤは家族の健康を支える重要な存在だったということがうかがえた。
私の「推し」は、祖母の「推し」だったことを知ったのが一番の収穫だった。
(記事を書いた人:川満美和子(かわみつ・みわこ)