「あー!シークヮーサーが食べたい!」
朝の連続テレビ小説「ちむどんどん」で主人公の暢子が、難題にぶちあたった時のセリフ。食べるといいアイディアが思いつくという効果があるのかはわからないが、シー(酸)をクヮーサー(食わす)という意味の通り、青切りのとても酸っぱい柑橘類で、やんばるの自然を代表する果樹。
シークヮーサーの旬は、真夏。7〜8月に出回るが、今年は8月末〜9月にかけてスーパーに並び始めた。「今帰仁の駅そ〜れ」の方によると、「今年は日照不足だったからかねぇ、出てくるのが遅いさ。実も少し小さいかな。」とのことだったが、わたし的には味に大差はなく、やっと出てきた嬉しさのほうが勝っている。
その理由が、この時期の朝の社内の光景にある。やんばる出身の宮城順子さんが、出勤してきて、「ほら、とってきたよ」と手に持っているのが、1粒のシークヮーサー。出勤の途中に見つけたと話す。もちろん、人様のものを勝手にとってきているわけではない。街路樹と街路樹の間などで見かけるらしい。鳥が食べて自然に落ちた種から自然に生えて育った様子で、なかなか他の人は気づかないそうだ。まさか、やんばるでもなく、那覇市でシークヮーサーが自然に生えているなんて誰も知らないのかもしれない。しかし、やんばるで鍛えた洞察力だろうか。順子さんは見逃さない。「あい、ここにあるねぇ」と見つけては「収穫」してきてくれる。それが3粒、4粒と「収穫量」が増えると最盛期なのかな、と旬を感じる。
順子さんのシークヮーサーは、朝のすっきりドリンクに生まれ変わる。おしゃれに言えばフレーバーウォーター。シークヮーサーを、皮ごと種ごと絞ってピッチャーに入れて水と氷を入れただけ。もぎたてを使っているだけに、そこら中に爽やかな香りが広がる。暑さと湿度の中、出勤してきたみんなの喉と心を落ち着かせてくれる。
ちむどんどんのオープニングのアニメで、暢子がオレンジ色の果樹をもぎ取るシーンがある。あれは、シークヮーサーである。収穫せず、そのまま木に実を残し、カミキリムシにも食べられずに生き残り、秋が過ぎた頃、黄金色になる。市場ではあまり見かけないが、という響きだけで幸せな気分になる。そういう名前をつけた沖縄の先人のセンスに感謝してしまう。
シークヮーサーのもう一つ変わった顔を紹介したい。シークヮーサーの花の蜂蜜だ。その白く小さな花には蜂も集まってくる。これは、沖縄の人でも、いや、沖縄の人こそ、「えっ」と驚く。
今帰仁村の玉城養蜂の玉城正富さんは、シークヮーサーの花の他に、イジュやフカノキの蜂蜜といった、やんばるの自然から蜂蜜を作っている。ひと口なめると、やんばるの大自然を飛び回る蜂のような気分になれるかも。
(お客様担当 かわみつ・みわこ)