太陽が味方になった夏の一日

初めての東村は私を解放した。日傘もささず帽子もかぶらず、太陽を目いっぱい浴びたのだ。

 

東村は沖縄本島北部、世界自然遺産に登録されたの一角を占める。那覇市から車で約2時間。遠いからだろうか。「行ったことがない。どんなところ?」「10年前くらいに行ったかな」という地元沖縄でも詳しく知らない方や行ったことがない方もいる。沖縄で一番のパイナップル産地、手つかずの自然が多く残っている。

 

7月中旬、パイナップル農家、新里善幸(しんざとよしゆき)さん(40歳)の畑を訪問するため東村へ向かった。那覇市から高速自動車道に乗り30分程走ると、沖縄のコンクリート造りの住宅街から、海や小高い山、ダムへと景色はガラリと変わる。高速道路を降りると左側には名護湾が広がる。海底まで見えそうな透き通った碧い海が見える。この景色はこの先起こる楽しいことを想像させ、私をワクワクさせてくれる。

 

東村が近づくにつれ奥深くなる山々。高速道路を降り約40分、東村内に入るとヘゴ類などの亜熱帯の植物が覆いかぶさりそうな勢いでイキイキとしている。山原の中でも豊かな水が植物に勢いを与えている。道路沿いには、こじんまりとした共同売店が見える。

 

脇道に入りしばらく走ると、突然視界が開けた。

 

赤土の広い丘の上には細長い深緑の葉が整然と並び、その中に収穫を間近に控えた青々としたパイナップルの実を抱えている。手入れするたびに腕に傷がつくという分厚い葉、トゲトゲした(実の上の葉)、ゴツゴツした実、すべてが行儀よく可愛らしい。

 

緑のパイナップル畑の先には青い空と青い海。空と海の境界線がわからないくらい青が続く。

 

日差しの強さと暑さに驚いた。日焼け対策の帽子も日傘も車に置いたまま畑へ。那覇では日傘とアームカバー、日陰を探して歩くが、ここではそんなものは必要ない。日焼けを気にしているのが勿体ないくらいの景色と解放感。この時間は、太陽を思い切り浴びて楽しもうと決めた。

 

「晴れが続くと実が大きくなって甘さものるんですよ」と新里さん。

収穫までの約2年、このギラギラとした太陽を栄養に、美味しく育つパイナップル。私も太陽を味方にしたいと思った。

 

ジリジリ突き刺さるような日差しで汗が一滴二滴。それも気にならない。1時間ほどの滞在にすぎなかったが、視界に入るすべての自然から目いっぱい力をもらった。

 

この記事を書いた人

井坂歩(いさか・あゆみ)

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