e-no株式会社は18年前から障がい者雇用を行い、現在は9人が商品配送センターで働いています。ダウン症や自閉症や知的障がいなどハンディを持つ彼らは、緩やかな一歩一歩かも知れませんが、毎日の積み重ねで成長していきます。今回は彼らのエピソードを紹介します。
毎週金曜日は配送メンバーが集まりボッチャを楽しみます。朝の掃除が終わったあとの8時30分から8時50分までの20分間が競技の時間です。(ボッチャとは、運動能力に障がいがある競技者向けに考案されたスポーツで、パラリンピックの正式種目です。赤と青チームに分かれ、的となる白いボールに自分のボールを近づけたチームが勝ち。シンプルなルールながら戦術的にも楽しめます。)

ボッチャは半年ほど前からe-noで流行っています。年齢や性別を越えて楽しめるゲームなので、みんな熱中しました。やり始めのころ、配送メンバーが投げたボールは、右に行ったり左に行ったり、手前過ぎたり、かなり遠くに投げてしまったりと、上手くいきません。私でも圧勝できるほどに。
それが半年ほど過ぎた10月、社長の信介さん(会社では皆さん付けなので、社長でもそう呼びます)が金曜日の朝に何気なくボッチャを見に行くと、みんな上手くなってる。「荘司さん、勝負しにいこう」と声がかかりました。
配送メンバーはリーダーの上原信弥さんをはじめ3人、こちらも社長、先輩社員の選抜3人組の真剣勝負。
一投目、選抜チームは的となる白いボールへ約5cmに迫るナイス投球。すると信弥さんチームは、さらに上をいく投球で内側にピタッと寄せます。そんなはずでは、これまで楽勝だったのに、と思っていたが、終わってみると惨敗・・・。
この半年間、信弥さんらは毎週コツコツと練習してきていました。「自分なりのやり方」を時間をかけてつくりあげていたのです。私たちが気付いた時には、実力は遥かに上になっていました。

このような事は初めてではなく、これまでも似たような事がありました。18年前に障がい者雇用の1期生として信弥さんと、饒平名達哉さん、冨山浩之さんが入社してきました。当時、私は配送業務のリーダーで3人を迎える側です。
お客様へお届けする健康食品や化粧品は、大きさや形などさまざまです。それにあわせた梱包の箱も仕方も微妙に異なります。商品を丁寧に、綺麗な形でお届けしなければなりません。
箱の組み立て作業では、信弥さんら3人と、教える側の配送メンバーや私、ともに試行錯誤が続きました。最初のころ、手先は器用ではなく、動きもぎこちなく遅く、どうすれば速く綺麗に組み立てる事ができるのか。教えと実践を一つ一つ繰り返していきました。
その頃にも、3人と私で箱作りの速さと綺麗さを競争して、私が圧勝したことがありました。間もなく私も別の部署に移りそれから2年後、たまたま配送業務に顔を出したら、3人の箱作りは明らかに以前とは違います。
思わず、「よし、勝負をしよう」。結果はボッチャと同様です。綺麗さ、速さともに彼らが数段優れていました。入社して2年、毎日の仕事の中で、どうやったらもっと上手くなるのか、考えながら実践していたのです。
手先が不器用な信弥さんは、もっと上手くなりたい。という気持ちが人一倍強く、当時は私にも「二人と箱作り勝負したけど今日も負けてしまった〜。どうやったら良くなるかな」。とよく相談に来ていました。このような相談を私だけでなく、他の人にも聞き、そしてアドバイスを実践、自分にあったものは取り入れる。これを2年間も繰り返していた結果、明らかな成長を遂げたのだと思います。
ボッチャの半年、箱作りの2年。私の知らない時間の中で、信弥さんたちの実践は続き、確実に「自分流の仕事」をつくりあげ、戦力になっていたのです。
彼らは続ける事の天才です。誰でも出来ることを、誰もできない位やり続ける。ややもすると私たちは、少し出来ただけで飽きが来てまた次に移る。結果、成長はそこで止まる。e-noが大切にしている朝の掃除活動も、長年やっている中で私たちは、徐々にスタート時間が遅れてきたり、浮き沈みがありますが、彼らは入社以来10年以上も全く変わらず朝の掃除を続けています。
ある程度までできたら慢心し、成長が止まる。そうなりがちな私自身を振り返ります。「気づき」を教えてくれる仲間に感謝です。
この記事を書いた人

荘司 正樹
しょうじ まさき
新卒採用の第1期生として2001年に入社。それなので同僚は同期か後輩という環境。会社で出会った好きな言葉は「良いことを考えれば良いことが起こる」。以前からポジティブだったが、この言葉と出会ったおかげで超ポジティブに!