世界遺産とは、ユネスコ・国連機関が次の時代の人々へ、大切に守り残すべき「人類共通の遺産」と定めたものです。ピラミッド、タージマハール宮殿、万里の長城などの文化遺産、グランドキャニオン、ガラパゴス諸島などの自然遺産、峨眉山(中国)と楽山大佛のように自然と文化が一体となった複合遺産の三つのグループに分かれます。
日本には、自然遺産の鹿児島県屋久島、文化遺産の古都京都の文化財、厳島神社など、多数の世界遺産があります。沖縄県では、二〇〇〇年に九つの史跡が「琉球王国のグスクおよび関連遺産群」として世界遺産の登録を受けました。
十四世紀後半から十八世紀にかけて生まれた琉球王国の文化が世界の文化遺産として認められたことになります。フランス・ベルサイユ宮殿、ペルー・マチュピチュ等の有名な世界遺産と沖縄の文化遺産が同じ価値を持つと評価されたわけです。
今帰仁城跡、座喜味城跡、勝連城跡、中城城跡、首里城跡、園比屋武御嶽石門、玉陵、識名園、斎場御嶽、の九つの文化遺産が世界遺産として登録されています。
各城跡は、琉球の歴史が戦国から平和の時代へと大きく動いていく中で、それぞれ重要な役割を持っていた城(グスク)です。沖縄では、グスクは戦のための要塞、また、グスクは御宿(ぐしゅく)の変化したもので、神域を意味します。祖霊を祀る御嶽が、グスク・城内にあるのも琉球国の特色で、本土の城との違いとも言われます。

グスクの代表格「首里城正殿」
祖霊をまつる御嶽の門である園比屋武御嶽の石門と、王家の墓陵である玉陵は、驚くほどの高度な石造建築の技術が駆使されていると評価されています。また、王家の別荘である識名園は、本土にも例を見ない琉球独特の文化をデザインした庭園で、戦前は日本の名園としても登録されていました。

和・琉・中の融合「識名園」
斎場御嶽は、王国時代の人々が神々を祀る場所として最も大事にされていた聖域で、国の行事を行う場所でもありました。それぞれの世界遺産史跡は、琉球王朝の文化と歴史を語るときになくてはならないものばかりです。

精神文化の象徴「斎場御嶽」
これらの世界遺産は最北の今帰仁城から南端の斎場御嶽まで、直線距離約、七十キロの間に点々として連なっています。現代人は、王国の先人達が残した歴史と文化の結晶をこれから次の世代に送り渡す責任を持つことになります。
★ご質問も承っておりますのでお気軽にお寄せください。

亀島靖(かめしま・やすし)さん
1943年生まれ、那覇市出身、早稲田大学卒業。
歴史小説、歴史劇シナリオなど著作多数。
テレビやラジオのプロデューサーでも活躍。
ありのままの沖縄を感じる逸品、e-no shopはこちら