【沖縄こころ旅】岩場に咲く朝顔に出会った

 京都出身の私は、パワースポット巡りが好きで、恋愛運、健康運など、いわば「ご利益」を目的に奈良や三重まで足を伸ばしていた。
でも16年前に沖縄に移り住み、沖縄のパワースポットに行くと私の思いは変わってきた。「こうあらねばならない」という考えから解放され、自分の気持ちに素直に、今を楽しみたいという思いが湧いてくる。

 早朝6時、沖縄本島南部の南城市大里へ。車で30分ほど走ると、那覇の街並みからサトウキビ畑の広がる風景へとがらりと変わる。冬の収穫期を迎え、細いキビはすくっと立って穂先はゆらゆらと風に乗りながらなびいている。その風は豚舎からの匂いも運んできて、なぜか懐かしく感じる。キビの葉音と豚さんたちの匂いを「満喫」した頃に、琉球王朝よりやや古い時代にあった「島添大里(しましーおおざと)グスク」に到着。

 小高い丘の上にある展望台に登ると、太平洋側は中城湾、円弧に描かれた静かな海が広がる。グスク同士が覇を競った時代、中城湾の北側には勝連城が、その左には中城城、さらに北西には首里城が見渡せたといわれる。心を過去に寄せながら、ふーっと深呼吸。グスクに茂るアコウなどの林からは鶯やリュウキュウツバメらしき野鳥がさえずり、下の方の民家からは鶏が朝を告げていた。海側からは遠く、漁船のエンジン音がどこかのんびりと届く。ひと呼吸、ふた呼吸…するごとに自分が落ち着いていくのがわかった。

(過去と現在が交差している島添大里グスクの展望台から眺めた「中城湾」)

 

 展望台から降り暫く歩くと、いくつかの御嶽(うたき)や拝所(うがんじゅ)があった。沖縄の城(グスク)は、戦いや支配のためだけではなく、祈りを捧げる場となっていた。説明書きなどはほとんど無い。クワズイモや月桃が生い茂る。自然のまま佇み静かで、このあるがままの沖縄が私は好きなんだ、とあらためて感じた。「こうあらねばならない」という固くなった心がほどけていった。

 
 ゴツゴツした隆起珊瑚を踏みしめる。グッグッという音、足裏が痛くなる。岩場に咲く一輪のむらさき色の朝顔に力強さを感じ、心の中でストンと何かが落ち、新しい始まりを感じた。「見つけた!」今日はこの朝顔に会うためにここに来たのかもしれない、と嬉しくなった。

この記事を書いた人

お客様担当 井坂 歩 (いさか・あゆみ)