沖縄とんでもない物語・飲み物編 ガラナとチチャ・モラーダ
アメリカン・グラフティは薬の味⁉︎
南米と沖縄を結んで「サル〜!」
「ヒパヒパ!」「サルー!」「サウーヂ!」。さて、これらの言葉の意味は?
沖縄の島くぅとばでは「ハナハナ!」または「カリー!」。そう、全て「乾杯!」のかけ声だ。ちなみに、ハワイ語、ポルトガル語、スペイン語の順。
今年の10〜11月の沖縄では、いつにも増して多様な国の言葉が耳に飛び込んでくる。世界中の移民先から沖縄にルーツを持つ人々が帰ってくるのだ。
10月23日、沖縄市のコザ・ミュージックタウン音市場で「世界のウチナーンチュ大会in沖縄市〜ただいま!おかえり〜!」の音楽イベントが開催された。
国際色豊かな音楽やダンスパフォーマンスを楽しみつつ、多国籍屋台のフード&ドリンクをお目当てに、最初に向かったのはブラジル料理の屋台。
ブラジル国旗をイメージした黄色と緑、青い円がデザインされた帽子を被った60代位の女性に、コシンハというチキンコロッケと「ガラナ」というドリンクを頼む。
「子どもでも飲めますか?」と聞くと「大丈夫!ガラナの種子のエキスが入っていて元気が出ますよ」とのこと。炭酸が効いた爽やかな甘さのビタミンドリンクのような味。コシンハを頬張りながら、6歳の息子もあっという間に飲み干してしまった。
次はペルーの屋台へ。ペルーの国旗色の赤いTシャツを着た男性も女性も皆、彫の深い顔立ちだ。黒糖シロップをかけて食べるピカロネスという揚げドーナツやペルー風鶏肉のオーブン焼きの横に、赤紫色のドリンクがあった。
スーパーフードの紫トウモロコシを煮出し、パイナップルの皮やリンゴなどの果物とシナモンで香り付けした「チチャ・モラーダ」というジュースだという。「コドモOK!ペルーデハ、ヨクノマレテル」と若いペルーの県系二世の男性が教えてくれた。フルーティーでいてスパイシーな独特の風味を味わいながら、まだ行ったこともないアンデス山脈や世界遺産マチュ・ピチュに思いを巡らせた。
数日後、JICAのイベントでは、主人の遠い親戚でペルー県系二世のフェルナンドさんに偶然出会い、約20年ぶりの再会を喜んだ。一緒にいた同じ二世の男性がくれたのが、これまた偶然、チチャ・モラーダのキャンディーだったことにも驚いた。体にいい農作物をお菓子や加工品として活用するのは、沖縄のシークヮーサーに似ている。
奥さんが沖縄出身だという60代のペルー人男性に聞くと、親戚が集まるとオリオンビールや泡盛で「サルー!」と乾杯するのだそうだ。南米はスペイン語とポルトガル語の世界。移民先の植民地の歴史が言葉の背景にも浮かび上がる気がした。
10月30日、那覇市の国際通りで行われたウチナーンチュ大会前夜祭では、世界中から集まった県系人のパレードに胸が熱くなった(詳しくは8ページ)。
言葉や目の色も違う人々の手には沖縄の「さんぴん茶」。三線やそれぞれの民族楽器を奏で歌い踊りながら大きな輪になった世界のウチナーンチュの人々の心は、あっという間に一つになっていた。
平和を祈って「カリー!」。そして、「ヒパヒパ!」「サルー!」「サウーヂ!」
(お客様担当 あらかき・たみこ)