ルートビア アメリカン・グラフティは薬の味⁉︎

沖縄とんでもない物語・飲み物編 ルートビア

アメリカン・グラフティは薬の味⁉︎

ジリリリーン、ジリリリーン! 黒電話の向こうから聞こえてきたのはペンフレンドの男友達の声。「アナタとワタシに行きませんか?って誘われたのよ。たしか20代の頃、その時に初めてルートビアを飲んだのよね」。そう話してくれたのはイーノのお客様担当、安次富敏子さん(70代)。

横で聞いていた同僚の豊里尚子さん(60代)がすかさず、「デートよ、デートのお誘い!」と、いたずらっぽい笑みを浮かべている。

戦後、長くアメリカの統治下にあった沖縄。日本復帰前の1963年11月、嘉手納基地近くの屋宜原に日本で一番最初のドライブインレストランとして、「A &W(エイアンドダブリュ)」が登場した。ドライブスルーではなく敷地内に駐車し、車内で飲食を楽しめる新しいサービス。その看板メニューがアメリカの味としてウチナーンチュにも大人気となる、おかわり自由の「ルートビア」だ。

店内では、冷えたビールジョッキ入りのルートビアが楽しめる。

1970年代には「あ(A)なたと、わ(W)たしのドライブイン」というラジオCMが流れ、若者たちのデートの誘い文句にもなった。当時は幅広い世代がルートビアとアメリカンなサービスを満喫しに訪れた。今では、「エンダー」の愛称で親しまれている。

安次富さんが好きなルートビアは、18世紀のアメリカで生まれた。名前にある「ルート」は原料である植物の「根」と「ビール」が由来で、1930年代のアメリカの禁酒法時代には、アルコールを含まない炭酸飲料として大人気となった。

「免許を先にとった人が車を出して、女友だち4人でワイワイしながらルートビアを飲んだな~。正直言うとサロンパスみたいな味が強くて苦手なんだけど」と豊里さん。

そう、ルートビアの面白さは好き嫌いが両極端に分かれること。「独特の清涼感があってクセになる」「炭酸と薬草感のある味がいい」と言うディープなファン。対照的に「薬品っぽい味」「湿布薬みたいにスースーして苦手」と敬遠する方もいる。店内のポスターから、リコリス(甘草の一種)やサルサパリラの根、ジンジャー、セイヨウタンポポなど14種類ものハーブが入っていることが分かりそれぞれの言い分にもうなづける。

さて、つい先日、夫婦で慣れない法事の準備や片付けを手伝った帰り道のこと。「今日は夕食作るの大変だよね。エンダーに行こうか?」という運転役の主人の声かけに、「はい!」と一つ返事の私。「そういえば、試験前はルートビアを頼んで勉強してたな~。お代わりできるから学生の身にはありがたかった」と主人。ふむふむ、さては当時の彼女と一緒かな? そういえば私も…。懐かしい青春時代に思いを馳せているうちに、エンダーに到着。

車を止め、ルートビアとカーリーフライ(フライドポテト)を注文。日が沈み暗くなってきた車内で、お土産にいただいた御三味(法事用の重箱料理)を広げた。ルートビアの甘くてスースーするサッパリ感が豚の三枚肉にも魚天ぷらにもよく合い、体に染み入った。

さて、今年のクリスマスはアメリカンにルートビアで乾杯といこうかな。

この記事を書いた人

 新垣 多美子(あらかき・ たみこ)

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