熟成が魅力の「泡盛」

正月は「家宝の古酒」で寿ぐ

 

沖縄では多くの家庭で子の誕生の時や、家の新築祝いに5升甕の泡盛を用意します。子の成長や一家の繁栄を願う「想い」が「家の宝」としての甕に託されます。

 

 

それは泡盛の大きな特徴に由来します。日本酒や焼酎と違い、熟成させるほど酒質が向上するところです。 10年、20年と歳月を経るごとに甘く芳醇に香りたち、口あたりもまろやかさを増します。アルコールと水が溶け合い、そこに微かな香り成分や土でつくられた甕からの物質も影響し熟成していくといわれます。

 

その歳月は暮らしにつながり、子の成人や進学、就職そして結婚を熟成した古酒がともに祝ってくれるのです。

 

3年以上熟成させた泡盛を古酒と言います。3年未満の泡盛は、どちらかというと新鮮な若さが刺激的に感じますが、10年、20年とより熟成されることで、味と香りが深まっていきます。飲む前の香りと飲んだ後に鼻からぬける香りが、私は好きです。割らずに生で少しずつ飲むとより香りがふわ~っときて楽しめます。吸う香りと、口に入れたあとに息をはく時の香りとでまた違う。古酒は時間がたつと空気に触れて香りが変化していきます。いいものは「余韻」が違います。

 

お酒好きなお坊さんが絶対に倒れない徳利を作ったところ「貸せ貸せ(カラカラ)」と評判になったのが名前の由来と言われています。

 

 

古酒造りに磨きをかけていることで知られる瑞泉酒造。創業明治20年(1887年)、那覇市首里崎山町で酒蔵を営み王朝時代の伝統の古酒造りを大切に守り、沖縄一の古酒の貯蔵量を誇ります。

 

瑞泉酒造佐久本武会長から以前次のような話を聞きました。

 

沖縄には「誕生酒」があると力説します。甕に子どもの名前を彫って、親は生まれた子が成人した時に一緒に飲もうと想って、ずっとそのお酒を大事に保管します。子の立場からすると、小学校中学校のときに見ても特別興味はないと思いますが、成人し親の立場になってみると「自分のことを想ってこの甕ををつくってくれたんだ…という、親の想いを感じるようになります」と話していました。「時間が想いも一緒に熟成させて古酒の味になる、古酒は人と人をつなぐ沖縄らしい文化です」と会長は魅力を語っていました。

 

お正月や家族親戚が集まったら開く甕。甕からカラカラや抱瓶(だちびん)に注がれ振る舞われます。

 

沖縄の暮らしの中で親しまれてきた泡盛。新年を寿ぐ時に家宝の古酒をいただきます。家族の健康づくりにも泡盛です。唐辛子やニンニクを漬けて料理の薬味にしたり、よもぎや蜜柑を漬けて家族の健康を守る薬用酒に。母の実家の冷蔵庫には、亡くなったおばーが漬けたニンニク漬けが大事に保管されています。最近はおしゃれな飲み方も人気です。ブルーの鮮やかなバタフライピーや金色のウコンなどの野草を漬けて、色や香りも一緒に楽しみます。私の一押しは、香りも味も甘く包まれるカラキ(沖縄ニッケイ)漬けです。

 

いろいろあった2022年、元気に過ごせたことを祝う席で、古酒を楽しんでみませんか。あるいは今から仕込んだあなただけのハーブとのコラボ酒で、新しい年の健康づくりもいいですね。

 

記事を書いた人:真栄里時愛(まえざと ときえ)

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