かちゅー湯 鰹節の滋養と香りが体に染み渡る

沖縄とんでもない物語・飲み物編 かちゅー湯

鰹節の滋養と香りが体に染み渡る

「あ~、いい香り」。胸いっぱいに吸い込んだのは削りたてのかつお節の香り。日頃はパック入りの削り節をスーパーで買うことが多いが、久しぶりに専門店でかつお節を一本選んでもらい目の前で削ってもらった。

昨年の年の暮れ、那覇市松尾の第一牧志公設市場に店を構えて60年の「松本商店」には、お歳暮や新しい年を迎えるための買い出しに来る地元客はもちろん、物珍しそうに国外の方も訪れ賑わっていた。

「中身汁も沖縄そばもやっぱりこれでないと味が違ってくるからと言って、かつお節を削って買っていく方が多いんですよ」。そう話してくれたのは店に10年務める玉城さん。

「出汁にも料理にも重宝するけど、かつお節そのものの良さを楽しむなら、私の一押しは『かちゅー湯』。鍋の沸騰したお湯にかつお節を入れて火を止めて2~3分待って完成。シンプルにそれだけを飲むのが一番。続けて飲んでいると繊細な味にも気づける舌になってきて、味付けも濃くならないから身体にもいいと思う」と教えてくれた。

沖縄県内で唯一、鰹一本釣りと鰹加工場が現在も続いている島がある。かつては日本有数の漁場だった宮古列島の一つ、伊良部島だ。高校を卒業するまで島で育ち、現在は那覇市に住む前泊郁子さん(70代)は、漁港に鰹漁船が数多く出入りする様子をよく覚えている。夏、近所の加工場からかつおを煮たり燻す香りが漂い、働くおばさんたちの歌声が聞こえてくると、かつお節の加工が始まったことがすぐに分かったそうだ。

「黙ってもくもくと作業するより歌って楽しみながら手を動かしていたんだはず。美空ひばりの『目ン無い千鳥』とか当時の流行歌もおばさんたちの歌を聞いて覚えましたね」。

宮古では、かちゅー湯のことを「タテ汁」または「タチ汁」と呼び、かつお節と味噌、ネギを入れたお椀に直接お湯を注いでいただく。「風邪を引いた時や食欲のない時でも手軽に作れるし、あっさりして飲みやすく元気が出ます」と前泊さん。

イーノお客様担当の屋良茜さん(40代)は子どもの頃、お父さんを真似てかつお節削り器で削る手伝いをよくしていたそうだ。「体調の悪い時や疲れた時、今でもよく飲むよ。お椀にかつお節とニンニクをたっぷり入れてお湯を注ぐだけ。栄養がギュって凝縮されてるみたいで元気になる。お酒を飲んだ日の後にもいいよね!」

かつお節は高たんぱく、低脂肪でアミノ酸が豊富。特に体内では合成されない必須アミノ酸9種も含まれている。かちゅー湯は老若男女問わずおすすめしたい汁物の一つ。

私も松本商店で削ってもらったかつお節でかちゅー湯を作ってみた。ケチらずにたっぷり入れると、すぐに台所いっぱいにかつお節の香りが広がった。香りと一緒にゴクっと一口、また一口と飲むごとに、体の隅々にまで滋養が染み渡っていくようだ。

寒さもまだまだ続きますが、体の芯から温まり胃腸にも優しい沖縄の「かちゅー湯」はいかがでしょうか。

 

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(お客様担当 あらかき・たみこ)

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